言葉のない教師

 

僕は言葉のない教師に

あこがれる

 

けっしてよけいなことは言わない

教室に教師の言葉のない授業と

学校に教師の言葉のない遊びが

繰り返されて

本当に切実な

本当の必要性と必然性のある言葉だけが

使用を認められる

言葉の神秘性を

まだ失っていない子どもだけが

まず使用を許され

その子どもに話しかけられた

選ばれた教師のみ

学校で言葉の使用を認めるがいい

 

僕は言葉のない教師に

あこがれる

 

 

 

訪問学級 

 

病院のベッドの上で

女の子が本読みをしている

国語の授業

となりのベッドの赤ちゃんも

そのお母さんも聞いている

 

そこへお医者さんと看護師さんが

回診にやってきた

女の子はやめずに読んでいる

お医者さんが

具合はどうですか

と言ったので

僕は本読みをやめるように言って

病室を出て廊下で待った

 

回診が終ってお医者さんと

看護師さんが出て来た

その時 

廊下にさっきの続きを読む

女の子の声が聞こえてきた

 

 

 

 

夜 息子と小屋で

探し物をしていると

父が帰って来た

二人を見た父は息子に

何をしていると声をかけた

僕が本を探している

と答えたが

父は何も言わずに歩いた

父に何も答えなかった息子は

腰の曲がった父の

そばにいき

肩を並べて歩いた

父の肩に手を回して

小さくたたいた

小屋を出た僕に

二人の背中が

玄関に入っていくのが見えた

灯りがついたが

二人の話し声は

僕には聞き取れなかった